非線形とは

 突然ですが、非線形に関する入門書3冊をご紹介します。大学理系卒業レベルの知識があれば楽に読めるかも知れませんが、遠い昔に理系だった人にはちょっとゴツゴツした内容となります。全く文系な人には相当しんどいかもしれません。
 私はこれらの本を年末年始にじっくりと読みかえしたいなと思っております。高度に発達した金融工学が引き起こした『100年に1度の津波』のような金融不安や、Web2.0系サービスで引き起こる群集の動きや、世の中で出ている様々な指数、経営面での様々な課題などなど、理解が難しい事を自分なりに考えるヒントが得られるような気がしてます。

新しい自然学―非線形科学の可能性 (双書 科学/技術のゆくえ)

新しい自然学―非線形科学の可能性 (双書 科学/技術のゆくえ)

非線形科学 (集英社新書 408G)

非線形科学 (集英社新書 408G)

非線形とは何か―複雑系への挑戦

非線形とは何か―複雑系への挑戦

 『非線形とはなにかー複雑系への挑戦』について、岩波書店編集部が書いたメッセージがあります。私はこの文章がとても大好きです。自然科学を俯瞰しながら『非線形』の位置づけや意義をうまく言い当てているからです。文系の方にも興味を持っていただけそうな内容ですので、全文ご紹介します。

 自然科学の基本用語のなかには,しばしば否定形で定義される用語があります.非平衡,非保存,不可逆,不安定,などなど.それらはもちろんのこと,否定詞を取った用語,平衡,保存,可逆,安定といった概念がまず定義されてはじめて成り立つ概念です.しかし,そうした否定形でない概念よりも,否定形で語られる概念の方がより重要な意味をもつことがしばしばです.本書で扱われる「非線形」もまたその典型例といえましょう.
 非線形は,数学においてもっとも基本的である「線形」の否定形ですが,数学世界にとどまらない大きな意味があります.書名のサブタイトルにある「複雑系」ということばをどこかでお聞きになったことがあるでしょうか.20年以上前に,要素還元主義を超える新しいパラダイムが必要だと叫ばれたとき,その理由の筆頭に出されたのが「複雑系」の解析でした.そこは,単純に要素を積み上げていけば理解できる方法ではなく,複雑なものを複雑なまま理解できる方法が求められたのでした.残念ながら,必ずしもそれは成功を収めたとはいえません.マクロに複雑に見える背景にはさまざまな要素が絡み,たとえばフラクタルやカオスもしかり,散逸構造もそうですが,1つだけの視点や原因から探る方法で解決できるものではないからです.
 いずれにせよ,もっとも大切な視点は古くて新しい「非線形性」をどう捉えるかでした.すでに述べたように,「非線形」は数学に由来する概念です.きちんと理解するためにはどうしてもそこを避けて通るわけにはいきません.しかし,だからといって,いきなり数式で説明されても雲をつかむような話になります.本書では,できるだけその考え方を理解してもらうことをモットーに解説しました.厳密な部分は,各章の末尾に「ノート」として付けました.最後まで読んでいただければ,この分野に向かうための大きな自信が得られることと確信します.