動き続けるシステム

 2001年1月から今も動き続け、年間数十億円を稼ぎ続けているシステムがある。

 僕が創業社長を務めていた株式会社メディア*1は、日本で初めて固定IP電話サービス(固定電話と同等なIP電話)を2001年1月にリリースした。

 IP電話の技術もまだ未成熟で、総務省の技術基準や番号規則もなかった。そんな中、手探りでなんとか日本初の固定IP電話システムを構築した。

 そのIP電話システムが、7年11ヶ月経った今も動いている。
 ドッグイヤーと言われるIT業界で、こんなに長い間、お金を稼ぎ続けているシステムは本当に希だろう。
 当初から運用エンジニアたちがチューニングに苦労に苦労を重ねて安定稼働させ、最新のシステムにも負けないパフォーマンスを維持し続けた。彼らの努力と勤勉さに本当に感謝している。

 おかげで、僕も事業プランを書き実行した元創業社長として胸を張ることができる。


 あのデータセンターの奥の方に鎮座する黒色のラックの中で、チカチカと緑色のランプを点滅させていたサーバーや通信機器たち。乾いた空気と機械音、天井を這うケーブル群、等を思い出す。
 今、こうしてブログを書いている間も、あの頃と同じたたずまいで動き続け、IP電話サービスを提供し、こつこつと1円、2円と売上げを重ねて続けているのだろう。

 
 株主や経営陣が変わっても、サービスとその事業システムは、あの頃と変わってはいない。


 僕ら創業メンバーが構想し、創り、守ったこのシステムが、今後も多くの人たちにサービスを提供し、従業員の雇用を維持し続けることだろう。


<補足>
 1985年に通信が自由化され、国内外から多くのNCC(NEW COMMON CARRIER)が生まれた。それぞれの会社が夢を持って事業を展開した。全部の会社が上手くいった訳ではなかった。90年代後半からはインターネット時代での生き残りをかけた既存通信事業者の再編が始まった。同時にIPをネットワーク基盤とした新しい通信事業者もこの頃に多く誕生した。(僕の創った会社もその中の1社だった)やがて、新旧入れ混じった本格的な再編劇が進行した。そして現在、NTT、KDDISoftbank、その他という体勢で一段落した。
 NCC出身者の殆どは2、3回は大きな吸収・合併・売却・撤退といった大きな再編を経験した。資本の論理と競争の結果に振り回されながらも、サービスを継続するためにたくましく生きている人たちは少なくない。インフラサービスを担う人々の職業倫理や責任感は変わることなく高い。
 

*1:Metoropolitan Enhanced Direct Internet Access の頭文字をとって【 MEDIA 】と社名を決めた。ブロードバンド時代の直収IP回線はやがて媒体となり、いろんなコンテンツ流通をさせることで、最終的にはメディア企業になるという壮大な夢も込めていた。現在はUCOMに吸収合併され事業継続中。