#49 奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり。

 創業300年の奈良晒(高級麻織物)を扱う中川政七商店。
 表参道ヒルズの地下二階の麻生地等の日本の伝統工芸品を使った生活雑貨のお店『粋更』(kisara)や、伊勢丹新宿本店や三越銀座店にある手織り麻織物を使ったインテリア・生活雑貨のお店『遊 中川』等の多くの直営店を展開する。伝統工芸を基盤にしたメーカーでありながら、伝統工芸SPA業態を営む。

 SPAとは、「Speciality store retailer of Private label Apparel」の頭文字を組み合わせた造語で、製造から小売までを統合した最も垂直統合度の高い販売業態のことを言い、「製造小売業」と訳されることも多い。「ユニクロ」のファーストリテイリング、「無印良品」の良品計画、「オゾック」など多数のブランドを展開するワールド、「コムサデモード」などのブランドを展開するファイブフォックスなど、アパレル業界を中心に多くの企業がSPAに取り組んでいる。【参考:Realtime Retail】

 『奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり』(日経BP)は、中川政七商店の十三代目代表取締役社長「中川 淳」氏が書いた、『300年続いた麻の老舗を現代のブランドに革新させた道のり』の本である。

 帯には『中小企業こそブランディングが必要なのだ!!』とドーンと書いてある。確かに21ヶ月連続前年比プラス売上げを更新中とブランディングの成功者の本である。具体的な手順や手法も開示されており、ブランディング成功のケースとして読んでもこの本には充分な価値がある。
 加えて、中小企業の後継経営者のチャレンジ、悩み、失敗、そして成功が、生々しく書いてある。 
 既存の概念や常識にとらわれず、自分の頭で考え抜き、ビジネス書等で学び、発想し、実行を繰り返しながら、経営革新を進めた若き経営者の苦闘の記録でもある。

 中小企業の後継者、経営者、創業者、経営幹部の方々にお奨めの一冊である。

 ユニクロの柳井社長の『一勝九敗』を想い出し読み返したくなる一冊でもある。

奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり

奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり

一勝九敗

一勝九敗