#06 企業文化と人材育成 その2


企業文化の定義について、権威あるものや頻繁に引用されるものは、明確には存在しない。多くの人がそれぞれの理解でこの言葉を使っている。「企業風土」、「企業DNA」という言葉を、同意義で使う人もいる。

ここでは、企業文化を「企業の中で長い時間をかけて習得・共有・伝承される固有の価値観及び様式の総体」と広義に定義しておきたい。具体的には、思考特性、行動特性、人間関係の取り方、仕事のすすめ方、評価基準、判断基準、不文律、使命感、歴史観、倫理観、宗教観等の多くを含んだものとなる。


企業はその歴史を積み重ねながら企業文化を形成していくので、社歴が長ければ長い程企業文化の根っこは深いところまで強く張られているのが一般的である。
企業の成長ステージ毎にその企業文化が形成されていくようだ。

社歴の浅いベンチャー企業では、「成功を目指す強烈な野心」のみが際だつ企業文化か、「自分の好きなことで楽しくそこそこ生きていく」といった技術屋・職人肌の企業文化かの、どちらかに二極化している傾向がある。
前者は、若さ、スピード、大胆さ、臨機応変、リスク耐性が強みであるが、その裏返しでチェック機能の甘さを抱えている企業文化となる。後者は、若さ、ユニークさ、ニッチさが強みであるが、反面、事業環境の変化に適応できない弱さを持つ企業文化となる。

一度は成功し安定期にある企業は、その成功体験に基づく企業文化を形成する。
あの時はこうだったから、以前こう決めたからといった前例主義が始まる。一服し、成功を享受したい気持ちが、中長期を考えたときの不安より強い経営陣、社員が多くなる。更なる成長を強く求める者もいるが、多勢に無勢で何もできなくなる。
堅実経営の良さを持つ企業か、もう一皮向けた成長をめざす企業になっていくかは、この時期の企業文化を経営陣がどう創っていくか次第だ。

成功も失敗も幾度となく体験してきた企業は、強固で手堅い企業文化を持っている。社会に対する使命感を持ち、歴史観、倫理観も高い。全ての事業においてステークホルダーの期待を大きく裏切ることは無い。確実にあるレベル以上の結果を出すガチガチのプロトコルが重宝される一方、プロトコルを遵守しない社員、プロトコルを変えようとする社員は、社員レベルでつぶされる企業文化を持つところが多い。新卒入社後、わずか数ヶ月で習得できる・させる教育体制も整備されている。


次回に続く