#13 経営ノウハウと転職

オーナー経営者で「会社の経営がそのまま自分の人生」と言い切る人達は少なくない。ゼロから事業を作り出し、事業の全責任を負い、場合によっては個人保証で金融機関からお金を借りることもあるオーナー経営者は、事業を成功させる野望とその裏側の失敗の恐怖の間を行ったり来たりしながら会社経営を行っている。彼らは24時間365日、会社の成功を考え、願っている。

さて、会社員はどうだろうか? 「会社=自分の人生」とまで思い込むのは、終身雇用を前提にしないのが当たり前で変化のスピードが早い現代では、さすがに難しい状況ではある。しかし、人生の大部分の時間を使う「会社で仕事をすること」は「自分の人生の大部分」と言っていいだろう。成功したいという野望と失敗の恐怖も味わいながら、仕事(プロジェクト)に自分の全てをコミットすることは、会社員でもよくあることであり、まさにその期間は、「仕事(プロジェクト)がそのまま自分の人生」となる。

多少乱暴かも知れないが、「会社=自分の人生」のオーナー経営者のノウハウは、「仕事=自分の人生の大部分」である会社員の「自分の人生設計」や「転職」の際に、利用できるのではないのだろうか?
インプレスキャリアに転職相談に来られる登録者の方々とお話しを重ねる中で、そう思い始めてきた。
私自身、会社員の経験と零細企業のオーナー経営者として10年弱の経験があり、それと照らし合わせても、「オーナー経営者のノウハウ」と「会社員の人生設計」は意外に共通点が多い。

街の本屋では、経営に関する本が多く並んでいる。自分の人生設計の参考書として利用できるかという観点で、パラパラとページをめくってみてください。経営本が「人生設計」や「転職」に多くのヒントを与えてくれることに気づかれるでしょう。また、将来、経営的な仕事に携わりたい方にとっては、一石二鳥の勉強法としておもしろいと思いますので是非お試しください。

それではここで、経営に関するひとつの文章をご紹介したいと思います。一回目は、文面どおり読んでいただきたい。そして2回目は文中の「経営」を「人生」と置き換えて読んでみてください。
あなたの「会社経営」と「人生設計」になんらかのヒントが見つかるかもしれません。

『経営とはなにか。経営とはひとことでいえば、「価値」を創造する活動である。哲学、ビジョンとコンセプト、未来予測、意志決定、選択と配分、目標管理(変化への対応)、リーダーシップとチームワークがキーワードとなる。実績のあることをなぞったり繰り返すのに経営はいらない。ただパフォーマンスを向上させたり、コストを削減するといったルーティン・ワークは経営の中心作業ではない。経営とは創造的な活動なのである。』
(宮田秀明「理系の経営学日経BP社より引用)


*宮田秀明東京大学教授が書かれた本からの引用です。宮田氏は、IHIから東京大学に転職され、学術的な功績だけでなく、アメリカズカップの日本チームのプロジェクトリーダー、東大MOT(技術経営)の立ち上げ、民間技術開発プロジェクトの主導等の実績をお持ちの方です。 著書に「仕事のやり方間違えてます。成功を手にする「理系思考」10の法則」や「理系の経営学」等のプロジェクト管理や経営についての書籍をいくつか書かれています。私の恩師でもある宮田氏のアグレッシブな人柄も伝わってくる内容です。