#07 2007年 ITエンジニアに求められるもの(その4) イノベーションしてますか?
WTP−C=P
なにこれ? と思われた方も多いと思います。実はみなさんが良く知っている式なのですが、ちょっと表記方法が変わっています。説明は後で述べますが、その前ふりとして2つの会社の事例をご紹介します。
2つの会社
一つ目の会社はIBMです。IBMはハード中心からソリューションやサービスで収益を上げるビジネスモデルに転換し、コモディティ化したPC部門を中国企業Levonoに売却しました。
その後のIBMは順調に業績を伸ばしています。
2社目は、あるITベンチャー企業です。この会社は順調に成長していましたが、会社を上場させたい社長がどうしても利益額を大きくしたいために、新商品の開発をストップし、顧客サポートのレベルを落とし、コスト削減にひたすら邁進しました。
結果、開発陣は会社を去り、商品・サービスは技術優位性・新規性を失い、長期的な業績悪化のループにはまり込んでしまいました。
経営の基本原則
さて、WTP−C=P の式に戻ります。
【WTP】は、Willingness To Pay(顧客が喜んで払う価格、つまり収入)
【C】は、Cost(コスト)
【Profit】はProfit(利益)を意味します。
そうです、会社員なら誰でも知っている 収入−コスト=利益 のことです。
普通なら、売上げをS(sales)かR(revenue)で表現するところを、WTP(willingness to pay)としているところが、ちょっとおしゃれなのです。
WTP−C=Pは、一橋大学大学院助教授の楠木建氏が講演や書籍で引き合いにだされる『経営の基本原則』です。楠木氏は、『P:利益』を『継続的にプラス』にすることを『経営の基本原則』と定義し、企業の様々な活動をこれに当てはめて説明し、シンプルで説得力ある経営戦略論を以下のように展開しています。
『コスト削減』は最終的には『ラットレース』であり、近年のリストラクチャリング、アウトソース、IT投資、ERP、BPR、SCM等によるコスト削減は重要ではあるが、持続的に利益を増大するには十分ではないし、コスト削減だけに邁進する企業は、集団自殺的な行為を行っているようなものだ。
企業は製品やサービスに新しい価値を追加することによってWTPを上げ、利益を拡大しなければならない。イノベーションの本質的な役割がここにある。
なんとも歯切れが良くてわかりやすいです。
前に上げた2つの会社の行方も簡単に説明がつきます。
イノベーションしてますか?
『会社経営の基本原則』は、個人の『成功の基本原則』と読み替え可能なところも多いのではないのでしょうか? ちょっとやってみましょう。
WTPを、会社が喜んで払う給料と読み替えます。
Cは、生活に必要なお金、自己投資金、余暇に使うお金等となるでしょう。
そしてPは、貯金となるでしょう。しかし、あまり貯金が好きでない人もいますから、貯金を最大化するのが目的にはなりませんが、継続的にプラスであることは必要でしょうね。
メッセージはこんな感じでしょうか?
C(生活費)の削減は重要です。しかし、自己投資も必要です。リフレッシュも必要です。
自分自身に価値を追加することによってWTP(給料)を上げ、P(貯金)を継続的にプラスにし拡大しなければならない。
イノベーションの本質的な役割がここにある。
もう一度、皆さんに質問します。
イノベーションしてますか?