#06 2007年 ITエンジニアに求められるもの(その3) 「美しい島国、日本」のグローバリゼーション




「美しい島国、日本」のグローバリゼーション

私は日本が大好きである。まあいろいろとそんなに好きで無い部分もあるが、それらもひっくるめてトータルで大好きである。日本の文化、気候、景色、食事、電化製品、衣服等を受け入れ満足している。

特に日本食は大好きで、日本食を2〜3日でも食べないと相当なストレスを感じてしまうので、海外旅行や出張に行った際も、必ず日本食屋を探しあてて白米と魚を食べることにしている。帰国する飛行機は必ずJALANAにして、綺麗なキャリアアテンダントがサーブしてくれる日本風の機内食にホッとする。温泉も大好きである。美しい自然を満喫しながらゆっくりとお湯につかりリラックスし、浴衣でおいしい日本食をいただくのが最高の日本の楽しみ方のひとつだと思っている。

学問や仕事の分野でも、日本人同士で日本語で切磋琢磨していくことで、相当に高いレベルのいいものを創り出すことができる。世界の情報もほぼリアルタイムで日本語化されたものを入手できる。

そんな私でも、IT関連商品だけは、仕事とプライベートの両方で海外製品・ブランドをほとんど利用している。残念ながらという気持ちもなく、気づいた時にはそうなっていて全く違和感を感じることなく当たり前の事になってしまった。
英語はそんなにはうまくないが、IT分野で仕事をしてきたので最低限のものは必要だったので、それなりの能力はなんとか身につけたが、自分から英語圏にどっぷりと飛び込んで行くほどの能力と勇気は持てなかった。

フラット化する世界

さて、世界は平たくなってしまっている。競技場にあった壁や凸凹がなくなり、世界中どこからでも個人ベースでも競技に参加することができるようになった。55歳の米国人ジャーナリスト、トーマス・フリードマンは、その著書「フラット化する世界」で、急速なITとグローバリゼーションの進展により世界は壁が無くなり平たくなっていて、インドや中国のITエンジニアやオペレータが、米国などの先進国のホワイトカラーの仕事を奪っていることを詳細な取材に基づき紹介し、それが新しいグローバリゼーションだと定義している。米国では200万部以上売れ、日本等の先進国でもベストセラーになり、IT産業やサービス産業に従事する人々に新たな世界観を提示した。

オフショア開発と言語の関係

日本からのソフトウエア分野でのアウトソース先の66.5%(332億円)が中国である。(出典:社団法人情報サービス産業。2004年300社アンケート)
中国では、ITエンジニアの数は毎年十万人づつ増え、日本語を流ちょうにしゃべるものを増え続けている。日本語学習者が約39万人おり、日本語能力検定受検者数が約13万人いて、そのうち約6万人が1級受験者である。(出典:国際交流基金
言葉及び地理的に日本に近いこともあり、今後も中国へのソフトウエア開発のアウトソースは増加している。

インドのIT関連輸出相手国は、米国に約67%、英国に14%、英国以外のEUに約9%と、英語圏への輸出が8割をしめている。(出典:NASSCOM)  インドでは、ITエンジニアの数は毎年10万人以上増加し、そのほとんどが英語を流ちょうに使える。

言語の壁に阻まれる日本人ITエンジニア

さて、日本では、ITエンジニアの数は毎年2万人程度と言われており、そのほとんどが英語も中国語も流ちょうに使えない。中国人やインド人が日本語を使ってくれれば、一緒に仕事ができるのが実情なのだ。

世界がフラット化している中、世界から仕事を獲得してくるITエンジニア、世界に発信できるITエンジニア、世界から情報を得ることができるITエンジニアが、日本では圧倒的に少ないのが現状である。

「美しい島国、日本」で、世界を意識することなくITエンジニアに従事しつづけることはもう困難な時代にますますなってきている。

世界のどこにでももっていける陳腐化しない能力とは?

語学力は、世界のどこにでももっていける陳腐化しない能力と言っていいだろう。

そしてそれに付随する形で「コミュケーション能力」もあるだろう。米国、中国、インド、韓国は手強い競争相手でもあるが、協業の相手でもある。彼らとの技術交流やコミュニケーション無しに、この時代を生きていくのは難しい。また、「異文化を受け入れる心」、「事実を事実として受け入れる心」、「オープンな心」が必要になると思う。

技術力、語学力、コミュニケーション能力の3拍子揃った日本人が多くなると?

もし、日本人ITエンジニアの多くが、英語で書かれた海外メーカー製品のドキュメント、標準化ドキュメント、オープンソースのドキュメント、技術参考書、海外のITニュースサイトの記事等をスラスラ読めて、ネット上で英語圏のエンジニアと突っ込んだ議論や共同作業ができ、必要とあらば一人でさっさと米国に行って外国人エンジニアと直接話しをしてくるというような能力を持っていたら?

何か楽しいことが起きるのは間違いない。