考えよ! イビチャ・オシム

もし、イビチャ・オシム脳梗塞で倒れずに、サッカー日本代表チームの監督だったら、、、。
そう思っているサッカーファンも少なくないはずだ。
W杯まであと60日である4月10日に発行されたこの本には、極めて具体的なW杯の戦い方が書いてある。日本サッカー協会のW杯招致委員会の招致アンバサダーを勤める彼が、この時期にこのような本を書いた意味を彼自身が『はじめに』でこう説明している。

 日本代表について日本のメディアからは何度も「グループリーグを突破する方法は?」と質問されてきた。日本のサッカーファンは私に多くを求めすぎている。私は監督ではないのだ。しかし、私は、その答えを避けているわけではない。
 私は日本代表チームを信頼している。彼らを混乱させたくはないのだ。これから、この本に期すことは、少しでも力になればという処方箋である。私も彼らからサッカーを学ぶことができるのである。

このところ、日本国民はサッカー日本代表に無関心になってきた。まだ批判されるうちはいい。皆が試合を期待と関心をもって見ているから批判は起こる。日本代表のサッカーはつまらないのが当たり前になってきたから無関心になってきたのだ。TVでは欧州クラブチームの華麗なサッカーが毎日のように放映されている中、日本代表のサッカーはどんくさく古くさく見えるのも事実だ。
この状況は、日本サッカーにとっては危機的な状況ではないだろうか? 経営不振のチームも多いJリーグの地盤沈下を招きかねない。
イビチャ・オシムがこの時期にこの本を出したもうひとつの意味は、サッカー日本代表について日本国民がもっと期待と関心を持って欲しい そして、日本にもサッカーとともに暮らす人々が増えてほしい と心から願ってのことだと思う。


さえ、本の内容だが、
【第1章 日本はW杯グループリーグを突破できる】では、グループリーグの対戦相手であるオランダ、カメルーンデンマークの戦力・戦術分析が、現状のみならず各国のサッカーの歴史をひもときながらなされている。そして、その処方箋も書かれている。

【第2章 サプライズがあるからW杯は楽しい】では、優勝争い、ダークホース、MVP等につき予測をまじえ語っている。

【第3章 日本代表への提言】では、岡田監督から、有力選手までについて具体的に語っている。彼がこんなに固有名詞をあげて具体的にしゃべるのは始めてではないだろうか?中村俊介と本田圭介が共存できるかといった話題にも率直な意見を述べている。「自信」と「適応性(自分で判断するスピード)」が日本代表には必要だと言っている。

【第4章 なぜ日本人はリスクを冒さないのか?】では、「リスクをとらない」「プレイや結果に責任感がない」「情報過多で考える力が弱い」とか、日本の教育システムや社会システムまで言及して説明している。我々日本人にとってここは相当に耳の痛い話だ。
【第5章 日本サッカーの未来へ】では、次期代表監督候補としてストイコビッチ監督や西野監督の名前をあげたりしている。そして、「自分の頭で考える」「早く考える」ことが今後の日本サッカーには必要だと強調している。