#47 筑紫哲也〜若者たちの神々

 筑紫哲也さんが亡くなった。 
 ご生前のご功績を偲び、心からご冥福をお祈りいたします。

 僕が20代半ばの頃(1984〜1987)、筑紫哲也氏が編集長を務める『朝日ジャーナル』は人気の週刊誌だった。特に、当時20代〜30代の文系学生及びインテリ層に人気があった。やや大袈裟かも知れないが、雑誌を小脇に挟んで街を闊歩したり喫茶店で読んだりするのが、ちょっとしたファッションにもなっていたように思う。
 僕は理系の学生・社会人だったが、インテリ風になりたくてよく読んでいた。(中身はよくわからないのだが無理して)
 また、そのころ浅田彰の『構造と力』、『逃走論〜スキゾ・キッズ』が売れていた。当時28,9歳の京都大学人文科学研究所助手の浅田氏が書いた社会思想論は、その学術的で難解な内容にも関わらずベストセラーになった。(僕も両方とも読んでみたがやはりさっぱりわからなかった)
 そんな雰囲気の時代だった。学生運動も下火になり若者たちは新たな知や文化を望んでいたように思う。そんな頃、『朝日ジャーナル』誌上で、筑紫哲也と『若者たちの神々』との対談がスタートした。『若者たちの神々』とは、当時の若者たちから支持を集める20歳半ばから30代ぐらいまでの、ちょうど自分と同世代かちょっとお兄さん世代の、文化、芸術、芸能分野のカリスマたちのことだった。
 若いカリスマたちが堂々と筑紫哲也氏と対談する様はとても刺激的だった。ノホホンと生きている理系な僕もドキドキとしたし何かを感じていたように思う。

 第一回目の対談者は『浅田彰』だった。本を読んでもさっぱりわからなかったが、この対談を読むために買った。
 第二回目は、『おいしい生活』で一躍有名になった糸井重里。当時、えっ、そんな商売あったの?と驚いた。どんな人間がやってるんだろう?興味津々だった。
 第三回目は、写真エッセー『印度放浪』の藤原新也。『ニンゲンは犬に食われるほど自由だ』と言い切り、ガンジス川のほとりで水葬された人の死体が犬に食われている(ような?)写真が掲載されていたのには、ひっくり返って驚いた。一体、どんな強烈な体験をしたんだろう?と彼の人生を知りたかった。

 こういった新しいカリスマが続々と対談に登場してきた。僕は毎回くいるように読んだ。


 僕にとって筑紫哲也氏は、最先端の知・文化をかみ砕いて説明してくれる『カリスマ』だった。

 あらためて、ご冥福をお祈り致します。

■参考 対談者たち

* 『若者たちの神々』Part 1
o 浅田彰京都大学人文科学研究所助手】1957年神戸生まれ。
o 糸井重里【コピーライター】1949年群馬県生まれ。
o 藤原新也【写真家】1944年福岡県生まれ。
o 坂本龍一【ミュージシャン】1952年東京生まれ。
o ビートたけし【コメディアン】1948年東京生まれ。
o 森田芳光【映画監督】1950年東京生まれ。
o 如月小春【劇作家・脚本家】1956年東京生まれ。
o 新井素子【SF作家】1960年東京生まれ。
o 日比野克彦【デザイナーあるいはイラストレーター】1958年岐阜県生まれ。
o 北方謙三【ハードボイルド作家】1947年佐賀県生まれ。
o 島田雅彦【作家】1961年東京生まれ。
o 椎名誠【『本の雑誌』編集長】1944年東京生まれ。
* 『若者たちの神々』Part 2
o 野田秀樹【劇作家・演出家・俳優】1955年長崎県生まれ。
o 村上龍【作家】1952年長崎県生まれ。
o 林真理子【作家】1954年山梨県生まれ。
o 戸川純【ミュージシャン】1961年東京生まれ。
o 大竹伸朗【画家】1955年東京生まれ。
o 橋本治【小説家】1948年東京生まれ。
o 三宅一生【ファッション・デザイナー】1938年広島県生まれ。
o 山本耀司【ファッション・デザイナー】1943年東京生まれ。
o 鈴木邦男新右翼団体「一水会」代表】1943年福島県生まれ。
o 山下和仁【ギタリスト】1961年長崎県生まれ。
o 小栗康平【映画監督】1945年群馬県生まれ。
o 中島梓【評論家】1953年東京生まれ。
* 『若者たちの神々』Part 3
o 松任谷由実シンガー・ソングライター】1954年東京生まれ。
o 中沢新一東京外国語大学アジア・アフリカ研究所助手】1950年山梨県生まれ。
o 細野晴臣【ミュージシャン】1947年東京生まれ。
o 伊藤比呂美【詩人】1955年東京生まれ。
o 高橋源一郎【作家】1951年広島県生まれ。
o 鴻上尚史【劇団「第三舞台」旗揚げ】1958年愛媛県生まれ。
o 楠田枝里子【テレビ番組司会者・絵本作家・翻訳家】1952年三重県生まれ。
o ねじめ正一【詩人】1948年東京生まれ。
o 松本隆【作詞家】1949年東京生まれ。
o 菱沼良樹【デザイナー】1958年仙台生まれ。
o 大戸天童【株式会社劇男一世風靡代表取締役社長】生年不詳、福井県生まれ。
o 片山敬済【オートバイ・ライダー】1951年神戸生まれ。
o 南伸坊【イラストライター(イラストレーター+ライター)】1947年東京生まれ。
* 『若者たちの神々』Part 4
o タモリ【『笑っていいとも!』をはじめテレビレギュラーが週4本】1945年福岡生まれ。
o 渡辺えり子【脚本・演出・俳優】1955年山形市生まれ。
o 川崎徹【CFディレクター】1948年東京生まれ。
o 山口小夜子【ファッションモデル】1951年横浜生まれ。
o 井上陽水シンガー・ソングライター】1948年福岡生まれ。
o 嵐山光三郎【雑誌編集長・エッセイスト】1942年生まれ。
o 中上健次【小説家】1946年和歌山県生まれ。
o 北村想【劇作家】1952年大津生まれ。
o 天児牛大【舞踏家】1949年横須賀生まれ。
o 桑田佳祐【ミュージシャン】1956年茅ヶ崎生まれ。
o 里中満智子【漫画家】1948年大阪府生まれ。
o 田原桂一【写真家】1951年京都生まれ。
o 田中康夫【小説家・エッセイスト】1956年東京生まれ。

(※肩書き、誕生地は対談集の記載より。) 【Wikipedia