#04 2007年 ITエンジニアに求められるもの(その1)

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

今年最初のコラムは、「2007年ITエンジニアに求められるもの」と題して、将来のIT業界の事業環境や転職事情を予測し、ITエンジニアがそれにどう対処していくのかを考えてみたい。

第2回コラム「Off the course」に、『企業に勤めるエンジニアのキャリアは、ビジネスの大きな流れを無視して積み重ねることは難しい。特にIT業界では技術革新が著しくマーケットも日々変化していて、エンジニアにも時代に適応する進化が求められる。』と書いた。私自身、情報通信業界に20数年身を置いてきて、旬な技術、製品、サービスが2~3年単位で移り変わってきているのを体験しているし、その中でのエンジニアの浮き沈みも数多くみてきた。多くのエンジニアは自分の専門分野を会社が求めるところと一致するように努力してきて、うまく変化に乗っていったものもいるし、出遅れたまま時代遅れになってしまったものもいるし、職種を変えたものもいる。数学の知識を活かし金融系に進んだり、法律や会計等の何十年と殆ど変化の無い専門分野に鞍替えしたものもいる。

ここにきて、変化のスピードはますます早くなってきている。ITエンジニアには刺激的でやりがいのある時代であるが、油断したり巡り合わせによっては受難の時代となってしまう。

さて、今ITエンジニアに最も時代に即応することを激しく要求しているのはシリコンバレーであろう。 最近では日本のITベンチャー企業も早い段階からシリコンバレーに拠点を構えるところが増えているし、私の友人でもシリコンバレーに行ったもの、あるいは最初からシリコンバレーで起業した後に日本に逆上陸したものもいる。彼らはマスコミで取り上げられたり、ブログなどでシリコンバレーの情報を発信をしている人もいて、その様子がよりタイムリーにわかるようになった。

その中でも、渡辺千香さん(シリコンバレー在住のコンサルタント)が、昨年末12月21日日経新聞のデジタル時評に『シリコンバレーで求められるもの =専門性・技術進化 同時に=』 という見出しで、シリコンバレーのハイテクエンジニアの転職事情に関して書かれていたが特に刺激的な内容だったのでご紹介したい。

シリコンバレーのハイテク産業では先端の専門性が求められる。しかし、技術進化や興隆は激しい。「専門性」を深めるには、特定分野に没頭する必要があるが、一方で、没頭した対象がすぐに「時代遅れ」になるリスクも高い。エンジニアは高度な専門性と、技術開発の高速化との折り合いをいかにつけるのか。 (中略)

シリコンバレーのIT業界で働く人の一社あたりの平均滞在年数は三年未満(中略) 変化の激しい技術の世界では、事業方針は常に変わる。古い技術を新しい技術に入れ替えた瞬間に、「要らなくなった社内の人」と「新たに採用する必要がある人」が同時に誕生する。 (中略)

シリコンバレーに起きているのは高学歴化と給与の高騰だ。高学歴化は専門性の高まりの当然の帰結。 (中略)

就職年齢が上がる一方で、学歴があっても常に失業リスクを抱えており、実際、不景気の時は院卒でも一年、二年と仕事がないことはざらだった。自分の専門領域が次第に時代から遅れる傾向は否めず、四十代で一線から退かざるを得ないことも多い。 (中略)

一生の間にバリバリ働けるのはせいぜい二十年ほど。 (中略)

サラリーマンでもスポーツ選手や映画俳優のような稼ぎ方もしなければならない。それがハイテク王国シリコンバレーの実態だ。』
   【引用:平成18年12月21日日経新聞デジタル時評】
   (もっと詳細に知りたい方は彼女の著書「ヒューマン2.0」、ブログをご一読ください。)

どうでしょうか?とても厳しい転職事情です。手堅いことを良しとする人から見ると、ギャンブルの人生に見えてしまうかも知れません。 しかし、チャレンジすることが好きで楽観的な最先端ITエンジニアには、これほど刺激的でチャレンジングでおもしろい場所は無いでしょう。

読者の方でも何人かは、まだまだ日本がシリコンバレーほど転職事情が厳しくなくて、正直ホッと安心した人もいるかもしれません。 一方、いつかは日本もこうなり我が身の事だと思いキュッと緊張された人も多いと思います。

さて、いずれ日本もこんな転職事情になるのでしょうか? そうなった場合、エンジニアとしてどう生きるのか? 戦い続けるのか? そこそこに暮らせる程に防衛するのか? そんな世界から逃げ出すか?