#01 Stay hungry, Stay Foolish.

2005年7月。大きな喪失感から僕は抜け出せずにいた。人生を賭けられる新しい事業はまだ見つからず、食い扶持を稼ぐためのやっている副業のコンサルティングがこのままダラダラと続くかもしれないと思い始めていた。

そんなとき、スティーブ・ジョブズスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチに出会った。彼自身の三つの物語とメッセージが、僕の心と体に一挙に入り込んできた。

“Stay hungry, Stay foolish.”  スピーチの締めの言葉がすっと僕の中に住み着いた。

5ヶ月前の2005年2月。僕は自分で興した会社を辞めた。創業時からの仲間を残したまま。会社は従業員100人、売上げが月6億円と急成長し、単月黒字達成も目前だったが、先行設備投資が大きく多額の累損を抱えていた。会社の財務体質を健全化し安定成長の基盤を固めることがすぐにでも必要だった。そしてそのためには、僕が、保有する株式を手放し社長から降りることが必要だった。1ヶ月悩み、僕は目の前の解決策を選んだ。

通信は初めてだが営業が強いというフレコミの新しい社長と幹部スタッフ数人が大株主から送られてきた。僕は代表権を失い取締役会長になり、実質的に経営には口出しできない状態になった。机をたたきながら大声でしゃべる新社長との相性も悪かった。そして、数ヶ月後、社長時代に計画した設備改修の完了を見届けてから会社を辞めた。仲間を残したまま、大きな喪失感を抱えて。

すぐに新しい会社をつくり、新しいパートナーたちと新事業の計画を練り始めたものの、喪失感は埋まらないばかりかますます大きくなっていった。僕の心はわくわくしなかった。この事業ではこの喪失感を埋めることはずっとできないと思った。もちろん人生を賭けられるとも思わなかった。結局、僕はその計画から降り、ゼロから新事業を探すことにした。

縁あって、2006年1月にインプレスグループにジョインした。そして僕が言い出しっぺであるインプレスキャリアの一員となった。ぴかぴかのいい会社にしていきたい。そのための苦労や忙しさは、新しい仲間と一緒に心地良くやっていけるだろう。

この連載のタイトルを Stay hungry, Stay foolish. にすることにした。そこで今回はこれに関わる僕の物語を書くことにした。

スピーチ全文を掲載しているサイトのURLを下に記したので、ご興味を持たれた方は是非ご一読頂きたい。何かを感じていただければ幸いである。

  • とむさとう氏のブログ(スピーチの日本語訳)

http://blog.livedoor.jp/tomsatotechnology/archives/50067272.html

http://news-service.stanford.edu/news/2005/june15/videos/51.html
http://news-service.stanford.edu/news/2005/june15/jobs-061505.html