新書

ヤフー・トピックの責任者である奥村倫弘氏が編集部の現場をたんたんと語った本。また、インターネットニュースの歴史から今後までを控えめな口調で書いている。等身大のネットメディアの実態がわかる。僕もImpress watchに勤務していたので、この現場感はよくわかる。
第4章の『既存メディア、ネットメディアとの関係』では、インターネットニュースの一部がジャンクフード化するとの危惧を抱きながらも、ヤフー・トピックの品質向上に努めている姿勢には共感が持てる。SNS、Twitter、新興ネットメディアの登場により、彼らも『カジュアル化したニュース』の取扱いに悩んでいるのだ。ヤフー・トピックスが登場し存在感を増したとき、新聞、雑誌等の旧来のメディア関係者が悩んだのと同じように、インターネットニュースを巡る環境は複雑化し、制御不能となっている。ビジネスとして成立するラインも日々動いている。
現場の責任者としては気の抜けない日が続いているのだろう。勤め人として書けるぎりぎりのところは伝わっている。

ヤフー・トピックスの作り方 (光文社新書)

ヤフー・トピックスの作り方 (光文社新書)


村上春樹の秘密』 30年来の読者なのだが、村上春樹について良く知らない。ひとつひとつの作品について、詳細に読み込んできたわけでもない。そこで、この本を買ってみた。
生い立ちやエピソードがまとめてある。なんとなくわかった気分。彼自身、そして作品について、これ以上探求する気持ちは今は無い。これぐらいの距離感でつき合うのが、彼の作品を健全に楽しめると思う。


『ツキの波』 阿佐田哲也は好きな作家だった。『麻雀放浪記』は学生の頃に何度も読み返した。『Aクラス麻雀』は僕の麻雀のバイブルだった。ギャンブル全般に深い経験と洞察を持った彼のギャンブル小説は、悪漢ピカレスクロマンと呼ばれたりもする。阿佐田哲也がモデルとなった『哲也 雀聖と呼ばれた男』の原作者の竹内一郎氏が書いたこの本では、阿佐田哲也のギャンブル哲学が豊富に引用されている。
学生の頃、渋谷の雀荘でお見かけしサインを貰った。彼に近いところに行こうとした時期もあった。
こっぱずかしい気持ち半分で楽しんで読めた。ヒリヒリとしてささくれ立った感覚は、勿論戻ってはこなかった。

ツキの波 (新潮新書)

ツキの波 (新潮新書)


ブラック企業、世にはばかる』とは、穏やかではないタイトルだ。現役の人材コンサルタントが、世の中の雇用から見て業界構造や、会社の構造、日本の雇用慣習に駄目だしをしていく。指摘は人材コンサルタントや求職者の立場からは概ね正しいと思うが、新鮮味は無い。雇用主の視点から見るとやや一方的なところも散見される。どの立場で読んだとしても希望や勇気は湧いてこず、絶望しか読み取れない。この本を出した意味は?と思った。

ブラック企業、世にはばかる (光文社新書)

ブラック企業、世にはばかる (光文社新書)