成功する起業家の特質

Enterprisezine
『新規事業立ち上げに共通するパターン「顧客開発モデル」_スタートアップの成功の秘訣とは』
http://enterprisezine.jp/article/detail/1425?mode=print&p=2 の記事があがっていた。

 『アントレプレナーの教科書 ―― 新規事業を成功させる4つのステップ』の著者、スティーブン・G・ブランク氏のインタビュー記事である。彼はシリコンバレーの有名なシリアルアントレプレナーで、大手ベンチャーキャピタルから出資を受けたベンチャー企業8社の創業・立ち上げに携わった経験を持つ。これら8社のうち4社は株式上場を果たしたそうだ。現在は、UCバークレースタンフォード大学コロンビア大学等において起業家コースを開発し、教育・指導にあたっている。
 『顧客開発モデル』という、実際の顧客との関係性で事業の進捗を確認しながら経営を行うことが『新規事業たちあげ』手法として効果的であると述べている。

アントレプレナーの教科書

アントレプレナーの教科書

 
 さて、インタビュー記事の中で、『成功する起業家の特質』について尋ねられた彼の回答は、とてもシリコンバレー的でよくまとまっている。日本で成功している旧来の起業家にもあてはまっているようにも思えるのでご紹介する。最近の『草食系ベンチャー企業』は、ビジネスのエコシステムの中でこじんまりと生きていくことを目指す事が多いが、やはり本家本元は『肉食』のままのようだ。

Q4:(インタビュア)

 あなたは多くのスタートアップで成功を重ねていますが、その秘訣は何でしょうか?
A4:(スティーブン氏)

 私自身に限ったことではありませんが、一般的に、「成功する起業家の特質」というものがあると思います。

 まず第1に「パターン認識力」、すなわち他の人が雑音としか感じないようなことについても、見たり聞いたりした情報から特定のパターンを導き出す力です。第2に「俊敏さ」、すなわち一つのことから次のことへ素早く移行できることです。第3に「回復力」(resilient)、すなわち失敗してもそのことはすぐに忘れて再挑戦できる力です。これは起業家自身の性格だけでなく、それが許される文化があるか、ということでもあります。すばらしいことに、米国の文化にはこういった特質があります。実際、起業家というのは失敗しても精神的に全く傷つかないものです。

 第4は「情熱」、起業家というものは楽しんで仕事をし、100%でなく110%の力を注ぎます。起業家というのは仕事でなく、一種の宗教に近いものです。家に帰って家族といても、何をしているときでも常に事業のことを考えているのです。会社にいる間は仕事をして定時に帰る9時5時の起業家というものは存在しないのです。最後の5つ目の資質は「肉食獣的な貪欲さ」(rapacious)で、競合をたたきのめすということです。あなたの邪魔をするとひどい目にあうので、他人があなたの邪魔をすることを怖れるというものです。

 これらが成功する起業家の資質です。この5つの資質を挙げれば「そうだ、これがアメリカの起業家だ」とアメリカ人なら笑顔で答えるでしょう。また、人々は私にはそのような資質が備わっていると言いますし、私もそれを誇りに感じています。私は常々学生に、これらの資質が無いのであれば、起業を目指さずにどこかの大企業で働いた方が良いと言っています。だからといって、その人がだめだということでは全くありません。起業家というのはある意味「クレイジー」であり、多くのビジネスマンがこのような資質を持っている訳ではありません。普通のビジネスマンは「人を圧倒したい」と思っているわけではないし、「新しいことや、パターンを探すのが好きだ」ということでもないでしょう。見方によって異なりますが、起業家が「特別」もしくは「クレイジー」なのです。

 また、起業家が成功するために必要な文化/環境があります。シリコンバレーでは起業家の特質を持つことが認められますが、それは米国でも他の地域では受け入れられにくいものです。古い言い回しですが「出る杭は打たれる」というのが、米国の他の地域では一般的であり、日本でもそうかもしれません。そのため、起業家は特定の場所、人とは異なることや成功することが認められる文化圏に固まって住んでいるのです。