#17 日本語CGMの特長 その1


ユーザー参加型のサイトが百花繚乱の様相を呈してきている。 Web2.0のかけ声と先行者の成功に後押しされ、多くの企業が新規事業として、ブログ、SNS、動画投稿、ブックマーク共有、Q&Aのプラットフォームを提供するようになった。
また、これらを集客やマーケティングのツールとして利用する企業、CGMサイトの開設・運用を請け負う企業、CGMに関するコンサルティングする企業も多くなってきた。

新しいビジネスであるため、その収益性を確保するための手法はまだ確立されていないようだが、これまでのネットビジネスの多くがそうであったように、トライ&エラーでその成功の方程式を見つけるための投資を惜しまない企業は少なくない。

私自身、CGMの楽しさと成長性は体感しているユーザーではある。
その一方で、Impress Watchの役員としては、大手古株のニュースサイトとの競争、新規参入のニュースサイトとの競争に加え、CGMとの競争も意識せずにはいられなくなった。
また、Youtube等の世界との競争も視野に入れると、日本語でメディア事業を展開することの限界も感じることもある。

そういった観点から、今回は、CGMの代表格であるブログとWikipediaについて気になることを4つ取り上げてみた。

ブログ投稿数世界1位の日本語

ブログ検索・分析サービスを提供する米TechnoratiでCEOを務めるDavid Sirfy氏のブログ(http://www.sifry.com/alerts/archives/000493.html)によると、2006年第4四半期に投稿されたブログで最も使われていた言語は日本語であり、世界中の37%を占めているそうだ。 2位の英語(36%)をわずかに上回り、3位以下は、中国語の8%、イタリア語の3%、スペイン語の3%と続いている。(http://www.sifry.com/alerts/Slide0013.gif)

世界でも最もインターネットユーザーが多い英語圏を押さえて、日本語が世界で1位とは、うれしいことである。一面、ちょっと意外な感じもある。自己主張が弱い日本人のイメージに、すぐに重ねることは難しい。

約1000万人の日本人ブロガー(*1)が、毎日56万件の投稿(*2)をして世界1位となったということになる。

(*1)総務省発表によると2006年3月時点でのブログ開設者は868万人から筆者推定。
(*2)David Sirfy氏のブログによると、全世界で毎日150万件の記事が投稿されているとのこと。日本語の比率の37%をかけて計算すると、毎日56万件の日本語のブログ記事が投稿されていることになる。

人気ブログは英語が主流

更に、人気の高いサイトベスト100のうち、22がブログだという。
Engadget、Boing Boing、Gizmodo、TechCrunch、The Huffington Post、Lifehacker、Daily Kos等の英語でのブログが上位に入っている。

残念ながら日本語のブログに、このレベルのものはない。
アクセス数の多さと内容の質の高さは、必ずしも一致するものではないが、日本で人気のあるブログがもし英語で書かれたとしても、ここまで上位にこれるものは極めて少ないように思える。

日本語ブログの内容

野村総研の調査によると、ブログに書き込まれている内容として最も多かったのは、個人的な日記であった。ブログ開設者のうち、8割を超えるユーザーが自身のブログにおいて個人的な日記を書き込んでいる。これに続いて、「趣味について(64%)」、「書籍や映画の感想について(30.9%)」、「製品やサービスの感想について(21.6%)、「テレビ・ラジオ・雑誌の内容について(17.9%)」、「料理、グルメについて(17.9%)」、「ニュースについて(13.2%)」、「ビジネス、政治、経済について(12.1%)」、「美容、検討について(11.7%)」、「あなたがお住まいの地域情報について(11.3%)」となっている。

 出典:これから情報・通信市場で何が起こるのか 野村総合研究所

英語のブログの内容についての統計はまだ見つけていないので、これが日本独特の傾向がどうかはわからないが、おそらく世界に比べて個人的内容に比重があるのではと思っている。

ウィキペディア投稿数世界5位の日本語容

一方、フリー百科事典のウィキペディアの記事数を言語別に調べてみると、
2007年4月18日現在で、
1位は英語で約174万件(2007/04/18)、日本語は第5位の約36万件である。圧倒的に英語の記事数が多い。
英語と日本語の間に、二位:ドイツ語57万件 三位:フランス語48万件 四位:ポーランド語37万件 がいる。中国、韓国ともベスト10には入っていない。

 出典:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Wp_stat_ja_all_lang.png

ここではブログで見せた日本語の強さは感じられない。むしろネットユーザーの数を考えると下位すぎる感もあるが、個人的内容ではなく、よりボランティア的、社会的な活動は弱いのかもしれない。

以 上