楽しいオタク

 I女史が年下の元同僚O君を『去勢されたオタク』と断じた。
 酒の席とはいえ、『草食男子』という優しい言葉がある時代に、この言葉は過激だ。あたってるだけに。

 『キ○タマない』『チ○チンない』じゃ過激すぎるし女性が使う言葉としては問題あるし、『男らしくない』じゃ幼稚で茫洋でアナクロだし、『草食男子』じゃ生まれた時から草食っているみたいだし、これらの言葉に比べたら『去勢された』の方が適切だ。

 O君は気の利いた切り返しもできず、じっともごもごしていた。僕は手を叩いておもしろがった。あげくには、『なんか言え!』とI女史と二人で詰めよった。最後にはちょっとかわいそうになってきたし、なんとかしなきゃと思った。
 そこで、O君のオスの本能に火をつけてくれそうなところに、二次会で連れて行った。もちろん、I女史は置いていったけど。O君はエンジョイしてくれたみたいでよかった。たんなるオタクになってくれればいいけど。


 それにしても、

 去勢された、、、ねえ。

 盛りのついた猫か、暴れん坊の競走馬みたいに、オスであることが問題を引き起こすならば、去勢される。そして、飼い慣らされ、飼い主に便益や幸せを提供する。
 人間が肉体的に去勢される時は、、、昔、中国で宦官の刑になるときとか、刑罰か、阿部定か。。どれも刑がらみだ。

 しかし、去勢されたオタクとなると、そんな元気で過激で業の強さとは全く正反対なイメージだ。リアルな恋愛や競争からはとっとと降りてしまって、自分の頭の中の幸せと完璧を追求するコミュニティの中で暮らしていて、仲間には心優しい男性という感じだ。『去勢』を受け入れ飼い慣らし楽しんでいるニュアンスもある。誰にも迷惑をかけていないし、ゴーイングマイウエイということか。

 去勢されたサラリーマンとなると、ちょっと泣けてきて、若いときには期待もされ元気も良かったが、いくつかの挫折を重ね、敗北感、妥協、諦観、疲労感等を抱えているイメージになってしまう。

 去勢された経営者となると、現状維持かゆるやかに下降し続ける会社の雇われ社長がイスにしがみついて、大株主に極端に弱そうだ。

 あらら、去勢されても楽しいのはオタクだ。オタク最強。